田舎の葬式の風習

田舎の葬式の風習を知らないばっかりに恥さらしになりました。

田舎に独り住んでいた母親が認知症になりました。

 

やがて地方都市に住んでいた兄が面倒を見やすいようにと、地方都市の病院に入院、そのまま母は逝ってしまいました。

 

母親の生家は東京でしたが戦時下に田舎に疎開し、半世紀もの間、田舎に住み続けました。

 

田舎では、お葬式のほとんどを自宅で行い、近所や親戚が総出で執り行うのが習わしでした。

 

私たち兄弟は、長年都会暮らしだったために、つい都会風の葬式を考えてしまいました。

 

ただ、田舎での暮らしが長かった母でしたから、田舎の人達が納得できるようにと、お通夜と火葬は地方都市で行い、本葬は田舎の斎場でやることにしたのです。

 

これが失敗のもとでした。

 

実際に、お通夜も火葬も滞りなく無事に終えました。

 

そして舞台を田舎の斎場に移した後のこと。

 

母親も兄も知人が多かったために多くの参列者がお見えになりましたが、身の回りの世話をする人が誰もいないという事態が発生しました。

 

それは、田舎の斎場では、身の回りの世話をする人は斎場の人ではなく、やはり近所の女性陣だったからです。

 

私たち兄弟はその葬式の風習を知りませんでした。

 

結局、皆が見ている前で親戚や近所の方々に頭を下げることになりました。

 

惨めでした。

 

母が逝ったことの悲しさに浸っている時間などありませんでした。

 

田舎では葬式などの冠婚葬祭を仕切って初めて一人前として周囲から認められるのですが、母の葬儀が、私たち兄弟にとっていい恥さらしになってしまいました。

 

(東京都立川市 おぼさん)